ヤッホーとキリンビールが業務・資本提携を発表した記者会見に行ってきました!
ビッグニュースです!
よなよなエールで有名なヤッホーブルーイング社と大手ビールの雄であるキリンビール社が業務および資本提携を、本日(2014/09/24)発表しました。
本日(2014/09/24)、午前11時より、東京會舘にて記者会見がありましたので、クラフトビールの情報を提供するメディアとして出席しました。
そのレポートです。
※以下に記載する内容は、私が取材したものであり、万が一事実と異なる箇所があった場合は、お詫びいたします。
業務・資本提携のまとめ
提携内容のまとめです。
まずは、確定事項。
- ヤッホーブルーイングは、キリンビールに製造委託する。
- キリンビールは、ヤッホーブルーイングに出資をして、33.4% の株式を保有する。
今後、詳細を決める事項。
- モルト、ホップなど、ビールを造るために必要な原材料を共同で調達。
- 販売するための物流などを共用する。
- 人材の交流を図る。
- ヤッホーブルーイングから、キリンビールへ、マーケティング、ファン作りなどのノウハウを提供する。
記者会見内容
記者会見場に到着すると、ヤッホーブルーイング(以下、ヤッホー)の井手社長とキリンビール(以下、キリン)の磯崎社長の2人の名前が貼られた机がありました。
その右側には、ヤッホーのビールと、キリンが立ち上げたスプリングバレーブランドのビールが仲良く並んでいます。
開始時間になると、キリンビールの磯崎社長が着席して始まりました。
そして、磯崎社長の紹介により、ヤッホーの井手社長が登場。
ヤッホーブルーイングとクラフトビールについてプレゼンテーションがありました。
以下、プレゼンの概要
- ヤッホーブルーイングについて
- ヤッホーのミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」
- フラッグシップのビールは「よなよなエール」
- 製品・サービスのマッピング
- 特に首都圏で販売している。
- インターネット通販も売れている。
- 昨年、公式ビアレストランをオープン。
- 顧客層
- 顧客は、大手に比較して、20代~30代、女性が多いと分析している。
- 日本のビール市場、ヤッホーの売上
- 日本のビール市場は右肩下がりだが、クラフトビールは、年率で2桁成長している。
- ヤッホーは9年連続、増収増益を達成。
- アメリカのクラフトビール市場
- アメリカは、クラフトビールのシェアが出荷ベースで7.8%、金額ベースで14.3%と、非常に高いシェア。
- 日本は、出荷ベースで0.4~0.5%、金額ベースで1%ぐらいと試算。しかし、まだまだこれから伸びていくと考えている。
- アメリカでは、サミュエルアダムスがクラフトビール市場の17.5%を占めている。最も成功しているクラフトビールの会社。
- サミュエルアダムスは、自社で作るだけで無く、積極的に外部の会社に製造を委託している。
- サミュエルアダムスのビジネスモデルを、ヤッホーでも取り入れていく。
- ヤッホーの目指す方向、提携の意義
- 革新的なサービス、製品を提供する。
- デザイン性、ネーミングなどのクリエイティブを重視。
- ファンを大事にする
- 増産をするための投資を軽減。
- 生産を委託することで、より品質の改善、新商品の開発に注力。
続いて、キリンビール磯崎社長のプレゼンテーション。
- キリンビールが目指すクラフトビール市場
- 大手のビールは、淡色のピルスナータイプという限られた味覚の範囲で競争している。
- 大手がよりたくさんのお客様に飲んでいただけるよう、大衆化、低価格化を進めた結果、味に違いが無くなり、大手のビールはつまらない、と感じる方が増えている。それによって、逆にお客様のビール離れを招いている。
- 味覚の画一化から脱却し、市場の流れを大きく変えていきたい。
- ビール全体を魅力的なものと思っていただき、市場を元気にする。その原動力が「クラフトビール」。
- 市場を活性化すると共に、ビジネスとして味覚の多様性をキリンの新たな競争軸にしたい。
- マスプロダクトとは違う、個性的な味覚と共に、造り手のこだわりなど、ストーリー性も合わせて楽しんでいただきたい。
- 今まで、ビールを飲まなかった若者や女性にもビールを飲んでいただけるようにしていきたい。
- キリンビールにとって提携の意義
- ビールの製造委託のみならず、包括的な提携である。
- 一緒に、クラフトビールというカテゴリを盛り上げて行く仲間である。
- 同じ理念を共有し、クラフトビール市場を大きくしていきたい。
- ヤッホーさんの企業文化を学びたい。学ぶべき点がたくさんある。
- 若手の育成にもためになる。
- ヤッホーさんと提携することで、キリンビールのイメージも変えていきたい。
質疑応答
プレゼンテーション後は、質疑応答の時間がありました。以下、いくつか、質問と回答を抜粋。
- 質問:どのビールを委託するのでしょうか。
- 井手社長回答:まだ、どのビールを委託するかは決めていない。検討中。
- 質問:どれぐらいの量を委託するのでしょうか。
- 井手社長回答:現段階で、年率40%で成長していて、すでに生産が限界まで来ている。それを越える分量をお願いしたいと思っている。
- 質問:今、ラガーや一番搾りを飲んでいるお客にも、クラフトビールを飲んで欲しいと思っているんでしょうか。それは、ラガーや一番搾りの縮小に繋がるんじゃないでしょうか。
- 磯崎社長回答:飲んでいただきたいと思っている。レギュラー、発泡酒、新ジャンルなど、縦方向には進化しているが、味覚という横方面はピルスナーに限定されているのは企業の努力不足ではないかと思っている。先般、アメリカに視察に行ったが、アメリカの若者は大手のビールは飲んでいない。クラフトビールを飲んでいる。日本でも、若者に飲んでいただけるように企業努力をしていきたい。
- 質問:キリンビールという大手に委託醸造をすることによって、今のファンが離れていくということは考えていないでしょうか。
- 井手社長回答:まったく離れていくとは考えていない。3つ理由がある。一つ目は、お客様は、革新的、チャレンジングなことをするヤッホーに価値を見出してくれていると感じている。2つ目は、造り手、売り手の顔が見えるようにしているのでお客様に支持してもらえると思っている。3つ目は、決して大手と同じようなピルスナーは作らないということ。多様性、個性的なビールを造っていく。大手さんの役割は大事だが、我々は、大手とは違うものをやっていくことに価値がある。だから、ファンが離れていくことは心配していない。
- 質問:なぜ、大手の中でキリンビールを選んだのですか。
- 井手社長回答:実は、数社に提案をしました。その中で、キリンさんが最も理念を分かち合え、最も具体的な提案があった。そのため、パートナーとして選ばせていただいた。キリンビールさんは、磯崎社長を含めて、ビールの多様性を理解してくれる風土が浸透している。
- 質問:キリンビールの立ち上げたスプリングバレーと、ヤッホーのビールとの関係性についてお聞きしたい。(クラフトビール東京が質問)
- 井手社長回答:同じクラフトビールといっても、キリンビールさんとうちでは違う。キリンビールさんは、ピルスナーから徐々に多様性のあるビールに進んでいる。我々は、安定性のあるよなよなも造っていれば、すごくとんがったコンセプトのビールも造っている。キリンさんがマスプロダクトの中で、新しい市場を開拓していただけるので、安心して先端的なビールに取り組むことができる。まったく役割が違っていて、相互補完的に一緒にやっていくことができる。
写真コーナー
さて、質疑応答後は、メディア向けに写真タイムがありました。(^_^)
まずは、井手社長と磯崎社長が提携の握手。
仲良く、よなよなエールを持って。
2人で飲みます。
※本当は、グラスで飲んで欲しいところだけど。(^^;
飲んだ感想を磯崎社長に聞く井手社長。
「美味い!」と応える磯崎社長。
こうして、和やかに写真タイム終了。
囲み取材
次は囲み取材の時間です。TV東京のWBS らしき取材陣が来てました。
囲み取材で拾った話題。
- キリンビールからヤッホーへ役員を派遣することは考えていない。もっと、若手レベルで交流を図りたい。(磯崎社長)
- 「地ビール」というと、どうしてもご当地ビールのイメージが定着している。もっと、クラフトマンシップに則ったこだわり、個性があって造り手の顔の見える「クラフトビール」という言葉を定着させていきたい。(磯崎社長)
- 8月までのビール市場は、全国的な豪雨のせいもあり非常に厳しい状況。良かったのは関東だけ。全国的には厳しい状況が続いている。(磯崎社長)
- 点だけでは普及しない。面でやらないといけない。キリンビールだけでは点。ヤッホーさんと組んで面で普及させる。アメリカでは、スーパーに「クラフトビール」というコーナーがある。カテゴリーとして認知されるところまで広めていきたい。(磯崎社長)
- ヤッホーさんのビールをキリンビールが店頭で売るようなことは無い。(磯崎社長)
- 委託することによって味が変わるようなことはない。(井手社長)
- 委託することにより、経営上の余力が出たら、さらなる品質改良、斬新なビールの開発に経営資源を使いたい。(井手社長)
まとめ
以下、クラフトビール東京(川野)の感想です。
基本的には、ヤッホーがキリンビールに製造委託をするというのが骨子です。さらに、資本提携も含み、キリンビールが星野リゾートに次いで、第2位の株主となります。
しかし、ヤッホーの経営の独立性は維持されるとのこと。
全体的に、キリンビールさんの危機感が非常に伝わってくる記者会見でした。特に、磯崎社長は、自ら動き、TOP として決断されている方と感じました。漏れ聞くところによると、スプリングバレーの立ち上げも、磯崎社長が積極的に進めたとのこと。ビールの幸せな未来を、自社の未来と重ね合わせて、変革したいという強い意志を、今回の提携に見ました。
ヤッホーとしては、生産設備を自前で建設することなく、良質のビールをもっと供給したいという会社としての使命を、今回の提携で実現化できることとなり、これからがさらに楽しみです。
僕は、いい提携になったと考えます。ヤッホーブルーイングとキリンビール。美味しいビールを飲むために、応援したいと思います。(^_^)
プレスリリース
クラフトビールとは
クラフトビールとは、なにかを知りたい方は、以下のページをご覧ください。
▶https://craftbeer-tokyo.info/about-craftbeer/
ヤッホーブルーイング公式ページ
キリンビール公式ページ
2014年9月24日