[中目黒] HATOS BAR (ハトス バー)【レポート】
【ショートストーリー】オアシス
カンヅメは辛い。
缶詰が嫌い、の間違いじゃない。今年は春先からずっと忙しくって、木枯らしが吹くようなこんな季節までそれが続いてる。先週は、スタジオにこもりっきりだったし。自己紹介が遅れたけど、ミュージシャンなんだ。スタジオでキーボードを担当したり、編曲もする。やれと言われれば、なんでもできる。まぁ、そんな器用さが買われて忙しいんだけど、お金にはあまりならない。なんでだ?
おっと、愚痴をこぼしている場合じゃない。待ち合わせの相手がやってきた。今、おれは中目黒駅の改札を出たところに立っている。
待ち合わせの相手は、古い付き合いだけど、未だに何をしているのか良く分からない。一応、コンピュータ関係らしいんだが、会社も入ったり、辞めちゃったり落ち着かない。ただ、ひとつだけ、食い物にかんしてだけは不思議と信用できる。今日は、こいつの誘いでビアバーを新規開拓しようとやってきた。あとは、おれの妻だけど、、、と言ってる間に、階段を降りてくる妻が見えた。
3人で連れ立って、山の手通りを渡り、目黒川も越える。この辺は来るたびに新しいお店が増えている。右へ大きく折れ、駒沢通りをくぐったら、左に曲がる。少し坂を登って、この辺かな、と見回すと、誘うように明かりが見える。
看板は見えないが、たぶんここだろうと勘がささやく。右から回り込んで行くと、テラスがあり、ここが HATOS BAR だと確信する。
お店にはいると入ってすぐに4人掛けのテーブル2つあり、正面にはL字のカウンターがある。
壁には、なにやら絵がたくさん掛かっている。
おれたちは、カウンターの向かいにある丸い小さなテーブルに座る。テーブルは立ち飲みもできるように高くなっているタイプだ。入り口のそばのテーブルには8人ぐらいが賑やかにパーティをしている。カウンターにも3人。それなりにうるさいはずなのだが不思議と気にならない空間だ。なんだか、落ち着く。
ビールとフードの注文だ。メニューはこれ。
ビールは日替わりみたいだけど、今日は志賀高原の IPA が2種類。
さっそく頼んでみる。
志賀高原 House IPA と志賀高原 IBA (Indian Black Ale)。IPA はすっきりと爽やかな苦みが気持ちを洗ってくれる。IBA は、気持ちをどっしりと落ち着かせてくれるような安定感がある。HATOS BAR の安らげる空間と相まって、重かった気持ちが、バラストを落とした気球のように軽くなっていく。
ビールを飲んでいると、注文した食べものがやってくる。
左は豚バラのスモーク。しっかりとしたスモークの香りが素晴らしくビールに合う。右は、BBQ のお肉のハンバーガー。旨いソースが染みこんだ肉とバンズを一緒に噛みしめると、口の中があわあわしてしまう。あまりの美味さに。
連れてきてくれた友達は、最近クラフトビールのサイトを始めたらしい。仕事辞めて、暇だしね、とか言ってる。物好きな奴だ。でも、こいつのおかげで、こんな安らげる空間で、美味いビールを飲み、そのビールにピッタリ合った旨い食い物をいただけてるんだから、ちょっと変な奴だけど、妻も喜んでるみたいだし、良しとするか。
気がつくと、忙しくてカンヅメになり、カサカサに乾いていた気持ちにビールが深いところまで沁みこんでいき、そこから井戸が湧くように新しいやる気が生まれてきているように感じる。素晴らしくリフレッシュされた気分だ。砂漠にオアシスがあるなら、ここはクラフトビール好きのオアシスと言ってもいい。
それから、数時間後、おれたち3人は、幸せな気分を抱えたまま、HATOS BAR を出た。
※以上、実在の人物には関係の無い、架空のショートストーリーでした。
HATOS BAR 訪問レポート
今回のショートストーリーは、ちょっとしたモデルが居ます。でも、もちろん、本人とは全然違います。設定だけお借りしました。
HATOS BAR は、住宅街の中にひっそりと佇んでいて、まるで伏せをしたビーグル犬のように目立ちません。いったんお店に入ると、さっきま通ってきた街は消えて、HATOS BAR という空間だけが存在するかのように落ち着けます。そして、美味いビールと食事。HATOS BARは、本当におすすめです。日常が慌ただしく過ぎていると感じている方、ちょっと疲れたなと思っているあなた、HATOS BAR というオアシスに行って、リフレッシュしましょう。おすすめです。
2011年10月28日